「坪単価いくらですか」(過去インスタライブから)
「坪単価いくらですか」——その質問に、私が答えない理由
家づくりを考え始めると、多くの方が最初に聞いてこられます。「坪単価はいくらですか」と。ごく自然な質問に思えるかもしれません。でも、私はこの質問にあえて正面から答えません。むしろ「なぜその質問は意味をなさないのか」を、時間をかけてお話しするようにしています。
坪単価は、いくらでも操作できる数字です
そもそも坪単価とは、家の総額を面積で割った数字です。ここに落とし穴があります。分母になる「面積」の取り方に、はっきりした決まりがないんですね。
実は私自身、20代の頃はローコスト住宅をやっていて、「坪単価24万8000円」といった表示競争の内側にいました。だからこそ、その裏側をよく知っています。安く見せたい会社は、家の外周にある軒先や、建物脇の犬走り(コンクリート部分)まで面積に含めて割り、単価を下げていました。ひどいところでは、家に必ず必要な基礎工事の費用を丸ごと別枠にして「坪単価」を出していたんですよ。
さすがにやりすぎだということで、こうした表示にはかつて公正取引委員会から不当表示として是正が入りました。それくらい、坪単価という数字は操作の余地が大きいということです。
「坪25万」が、最後には「坪50万」になる
分母をいじって安く見せると、どうなるか。契約した後で「これは付帯工事です」「これは追加です」と積み上がっていって、坪25万円のはずが、蓋を開ければ坪50万円になる。正直に最初から「坪50万です」とお伝えした会社の方が、かえって「なんでお宅はそんなに高いの」と敬遠される。そんな逆転が、実際に起きていました。
建築は「究極の現地製造業」なんです
私がいつも申し上げるのは、建築というのは「究極の現地製造業」だということです。水道管の距離も深さも、周りの高低差も、かかる法律も、土地ごとにまるで違います。同じ家を建てるにしても、場所が変われば必要な工事も費用も百万、二百万と簡単に動くんですね。だから一律の坪単価をお示しすること自体に、そもそも無理があるわけです。
家の中でも、玄関や水回りはお金がかかりますし、何もない部屋はかかりません。それを平らに割った数字に、どれほどの意味があるのか、ということなんです。
大事なのは「自分の経済力で建てられるか」です
では何を基準にすればいいのか。私の答えははっきりしています。坪単価ではなく、土地・建物・融資・引っ越しまで含めた「全体の予算」で考える。そして、その方の年齢・年収・自己資金・借入の状況といった事情を全部開示してもらって、「約束する暮らし」を実現できるかどうかを診断させてもらう。
もし坪単価で会社を選ばれるのなら、それはもう子育ての家のお客さんではない、と私ははっきり申し上げます。断熱材の種類で選ぶ方が、その断熱材のメーカーさんに頼めばいいのと、同じことなんですね。
比べる前に、その「基準」を確かめてください
この話は、住宅に限ったことではありません。「何かを比較するときは、前提になる基準を必ず確認する」——これは私がすべての判断で心がけていることです。基準のない数字を、基準にしてはいけない。立ち止まって、そもそもこの前提は何だろう、と考えてみる。それだけで防げるトラブルが、驚くほどたくさんあるんですよ。
それでは、今日もよい一日を。

