欲しいものは手に入らないかもしれないが、大切なものは手に入る。
家づくりとは、
欲望の塊みたいなものです。
多くの人が、
これから半世紀、死ぬまでに起りそうなこと、
求めそうなことをすべて満たすものを
マイホームに求める傾向がある。
自分の身に起こりうることだけならまだしも、
親族に起こりそうなこと、
どこかの誰かに起こりそうなことまでもすべて含めて、
それを解決するようなマイホームを求めるわけです。
将来将来、まわりまわり、あの人がこの人が
といえばいうほど、
現実生活からかい離していき、
それこそ、何一つ手に入らないまま、
人生を消化していくことになる。
私の責務とは、要するに、
欲望の塊を整理することではないかと思います。
分解して、分類して、除外して、順位付けする。
そもそも
人生で起こること、起こりうること、
産まれてから死ぬまでに起ることは、
誰でも似ているわけですが、
それを一度にすべて対処する方法など、ない。
そもそも、それがいつどんな形で起こるかわからないわけで、
対処するにしても、その時点でどうするか(できること、できないこと)となる。
いまできることと、30年後にできることはちがう。
一方で、
いろいろ想定して、起こりそうなことは
誰でも似ているわけですが、
まったく違うのは当人の稼ぐ力です。
住んでいる地域、です。
年収300万の方と、1000万円の方とでは、
稼ぐ力はちがいます。
生涯獲得賃金でみれば、30年で試算してもその差は2億円(年間700万円×30年)。
2億円も使えるお金(予算、支払い能力)がちがうわけですから、
住む場所、食べるもの、身につけるものはちがってきます。
住んでいる地域も同様です。
地価の安い田舎と、地価の高い都市部とでは、
同じ予算でも買える土地の条件はちがいます。
稼ぐ力も住んでいる地域もちがうのですが、
冒頭に書いたように、
家づくりへの要望は、どちらも殆ど同じです。
車で例えると、だれもがメルセデスベンツを求める。
しかも上位クラスのグレードを。
年収300万円世帯が、1000万円世帯と同じ住宅を求めるわけですが、
それはやはり、危険ですし、そもそも検討はできても買えない(住宅ローンが降りない)し、
仮に手に入れたとしても、維持できません。
つまり、そのマイホームはその家族を幸福にはしない。
他方、
年収1000万円世帯が住居費をできるだけ安くしたいと考え、
300万円世帯と同じ住宅を買う(住む)と、どうなるか?
それはそれで稼ぐ力に見合っていないわけですから
不平不満が生じて、結局、安物買いになる。これも不幸です。
欲しいものにはきりがないわけで、
欲しいものがどれだけ手に入るかは、
その人の稼ぐ力、努力の問題であり、
不動産業者や住宅業者の問題ではない。
(親の資産も影響する)
一方で、
大切なものはどうか?となると、
稼ぐ力に関わらず、
大切なものなら手に入る。
だから、小川の家の家づくりでは、
まず、あなたと家族の人生にとって
大切なものは何ですか?と問い、方針を伺います。
いわゆる、価値観です。
小川の家と価値観が共有できれば、次に進む。
(共有できなければ、その方にとって最適な住宅会社は小川の家ではない)
そして、実際の家づくりにおいては、
まず、大切なものを実現させることに注力する。
その見通しが立ったら、
次に、その家族にとって必要なものを実現させる
そして最後に、
欲しいものを実現させる。
相談者、依頼主、建て主には
それぞれ資金制約があります。
地域も違います。
稼ぐ力、支払い能力に制約があり、
欲しいものには、きりがないわけですから、
欲しいものを先に叶えようとすると、
大切なものが必ず犠牲になります。
家づくりで犠牲になる大切なものとは、
家族、とくに子どもが心身ともに健康に、
安全、安心して暮らせること、です。
もちろん、価値観は人それぞれですから、
私にとって大切なものが、
他の人にとって大切かどうかはわかりません。
私にとって大切なものは
「自分と家族が心身健康に暮らせること」ですが、
ある方にとって大切なものは
「駅までの距離」だったりするわけです。
~従って、家族が心身健康に暮らせること、は「欲しいもの」となる~
おそらく、今の住居の選択において、
もっとも重視=大切にしたのは、
「○○までの距離」
「家賃○○万円以下」
だったのではないかと思います。
つまり、あなたの人生において
もっとも大切なものが、
駅までの距離である、という現実です。
これはいいとか悪いとかそういう問題ではなく、
欲しいものは手に入るとは限らないが、
大切にしているものは手に入れている、ということです。
家を考えるとは
人生を考えること。
今年も残り3カ月。
自分と家族の人生が単なる消化試合にならぬよう、
自分にとって大切なものを問うてみるのは、
命を大切に使うという意味でも、
大事なことではないでしょうか。
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