ウルトラマラソン

納得いくまで、走られてください。エピソード②

「納得いくまで走られてください」

早朝5時

40km地点でリタイアした若者2名をスタート地点の小浜まで送り届けた後、

コースに戻り最後尾のランナーから声かけしていくことにした。

 

夜が明け、快晴

40km以降2名を収容し、中間地点の島原城(57km)へ向かう途中

一人の高齢女性がふらついていた。

車を止め、飲み物を準備して声をかける。

 

「車を止めてくれて、ありがとうございます」
(私の車はエイド車両ではないので、飲み物などを期待していないわけです)

 

彼女が差し出した小さなボトルには何も入っていなかった。

持っていたボトルの蓋をきちんと締めていなかったため

全部こぼれてしまっていたそうです。

 

「まあ座りませんか」と積んでいたアウトドアチェアを勧める。
「原城(30km)のあと、道に迷ってしまって、、、、」

 

深夜の原城は道に迷いやすい。

気づいたら畑の方に入ってしまい、転倒。

手には絆創膏、サポートタイツには穴が空いていた。

 

ほかのランナーの光が見えるのだけれど

戻りたくて道を進むも、さらに離れてしまった、、、と。

(道迷いに気づいた時には引き返すのが鉄則だか、

疲労と睡眠不足で判断できなかったのだと思う)

怪我して手の爪も剥がれそうだと言っていた。

 

真夏の夜の試走会にも参加していたし

たくさん練習を積んできていたのがよくわかる。

 

「もう(次の関門には)間に合いませんよね」
(残り2時間ちょっとあるが、まだ10km以上ある)
「んー、厳しいでしょうねえ」

 

彼女は21時スタート。

すでに不眠不休で11時間弱

この時点で45kmだが、道迷いも入れるとおそらく50km以上、ロストが2時間。

道に迷ってさえいなければ、十分間に合っていたはず。

 

「リタイアした方がいいですよね?
 乗らないといけないですよね。皆さんにも迷惑がかかるし」

〜その目は、まだ行きたい、という意思があるし、心は折れていない。

多少の擦り傷はあるが、引きずっていたりしていない。

なにより、道に迷ったあと、すでに20km超、5時間近く進んでいる。

物凄い精神力とその体力に頭が下がる。

 

「もう少し、納得いくまで、走りませんか?
電話してもらえればいつでもどこでも迎えに来ますから」

 

「ありがとうございます。もう少し頑張ってみます」

 

私は島原城まで、他のランナーにも声をかけながらリタイアした人を届けた。

この方がどうしても気になったので、折り返す。

そろそろかなあというときに、別の収容車とすれ違い、

その後部座席に彼女の姿を発見。ホッとした。

 

そのとき、一緒にボラをしているKさんから電話が入る

「小川さん、◯さんを探しに行ってるんですよね。いま収容されたという連絡が入りましたから」

「はい。ちょうど見ました。よかったです」

 

私が湾岸のスーパーマラニックが好きなのはこういうことなんだと思います。
主催者の「全員完走させたい」という理念。
遅いランナーにはアーリースタートさせ、

速いランナーにはレイトスタートさせる。

老若男女、身体能力もセンスも関係ない。

地道な練習を積めば誰でも完走させてもらえる。

完走できなくても、悔しさとセットでやりきった感

しばらくすると、どうしてもっとできなかったのか?

と自問自答を繰り返し、なんだかリベンジしたくなってくる。

 

当大会では76歳の女性が完走されました!

お見事!としか言いようがない。

 

でも、その陰で、一緒に練習してスタートラインに立った

同年代の女性は上記の通りリタイアした。

 

私がリタイア会を企画主催したのは

こういうなんともいえないエピソードに光をあてたいからです。

 

やっぱり人は人にインスパイアされるし、

そこから学べるものはたくさんあると思うから。

  • Facebook
  • Twitter
  • はてなブックマーク
  • @LINE

私が書いています

代表取締役 小川勇人(おがわはやと)

代表取締役 小川勇人おがわはやと

1973年長崎の小さな工務店の長男として生まれる。2000年頃、シックハウス症候群と様々な社会問題が子育ての住環境に起因していることに気づく。以降、子育てを優先した家づくりに徹する。日経ビジネス誌にて「顧客の人生を助ける善い会社」として紹介(2015),著書「暮らしは変えられる」(2008)#妻と二男一女#ウルトラマラソン#登山#MBA(長大大学院,2014)#熊大工学部(1996)#長崎東#福大非常勤講師

暮らしは変えられる 「子育て優先」という選択 小川 勇人  (著) 小川 勇人のFacebook
子育ては、小川の家。