納得ではなく理解
施主やつくり手にとってのこだわることが目的の家づくりであれば、その過程で生じる様々な問題に対する判断・選択において納得するまでこだわることが大切かもしれません。
しかしながら、家族が心豊かで健康に暮らせる住環境を実現する子育て優先の家づくり=私たち小川の家づくりにおいては、実現するためには「気に入らないこと、思い通りにならない現実を受け入れる」という姿勢が必要になります。
納得しなければ先に進まない
納得してから~したい
納得する、納得できるに越したことはありませんし、それを否定するつもりもありませんが、私は依頼者や相談者、そして家づくりに携わる多くの利害関係者に対して納得していただくことを必須と考えていません。なにを重視するかというと、冒頭の納得ではなく理解していただくことです。
全国からいただく相談の中に
「主人が納得してくれない」
「がんばって説得します」
というのがよくあります。
以前の私は、納得してもらうように、頑張って説得していました。
しかしながら少なくとも子育て優先の家づくりにおいて、この姿勢は間違っていることに気が付きました。
なぜかというと、家づくりの目的が納得させることであれば、納得してもらうまで説明・説得する必要がありますが、子育て優先の家づくりの目的は「今の住環境での暮らしを変え、家族が心豊かに健康に暮らせる家を実現すること」です。突き詰めていけば、大切なことはその過程や枝葉の問題に対して納得するかどうかではなく、全体の状況や背景を理解することが重要なのです。
わたしが心掛けているのは、納得していただけるかどうかは別として、背景を含めきちんと説明し、現状を認識し、理解していただけるようベストを尽くすこと、です。
わたしは全体をみて目の前の事象・課題に対して、ものごとを判断しています。
しかしながら、一般的に生じる納得できるか否かの対象は、目先の断片的な問題が多いのです。したがって、ある部分だけをとらえてそれを納得させようとしても、全体として実現するかどうか、本来の目的地にたどりつくかどうかという視点で考慮したとき、うまくいかない場合が多いのです。ゆえに、解決法としては、全体の背景をきちんと理解していただくよう説明するしかありません。それで理解していただけないようであれば、私の力ではどうすることもできません。つまり、小川の家は不可能です、となるだけです。
説明し、すぐに納得していただけるに越したことはありません。
しかしながら、私にとって顧客との約束を果たすためには、納得していただけるかどうかは重要ではありません。私は家族の心豊かで健康的に暮らせる住環境の実現を請け負っているのであり、それを顧客は求め、依頼し、その実現を約束しているのであり、納得やこだわりの家づくりを請負、約束しているわけではないからです。
ある種、家づくりにおける嫌われ役、憎まれ役がわたしです(苦笑)
ただ、あくまでもお客様家族のためであり、約束を果たすためであり、目先多少嫌われようが、ムッとされようが、それは仕方がないことと自分に言い聞かせています(笑)
お客様が家づくりの過程を振り返ったとき、
苦しみを乗り越えて、一歩前進したとき、
あるいは新居での暮らしがはじまったとき、
「勇人さんが言っていた意味(こと)がようやく納得できた」と思って頂ければ、それでよいのだと思います。
あとになって、騙された、失敗した、「小川勇人に頼まなきゃよかった」と思われる(評価される)ことは、目先嫌われるのとは次元が違うほど、イヤなのです(笑)