家造りの基本知識

3年後のほうが得なのか?

「いつやるか、いまでしょ」
懐かしい響きさえある、一世を風靡したこの格言。
なんでも、いま、できるわけではありません。
思いつきだけで行動すると結局、堂々巡りに終わります。
何かをやりとげようとすれば、
検討、準備、気持ちの整理に要する時間が必要です。
マイホーム購入を検討する際、
「いつ踏み切るか」は誰でも熟慮します。
本稿では、タイミングをお金の問題から解説してみます。
サラリーマンの場合、定年があります。
そしてその定年は、サラリーマン側には決定権がありません。
自分の意志でいつまで働くかという問題と、
勤務先の制度上、いつまで働かせてもらえるか、は
決定権者がちがう問題です。
住宅ローンの返済をいつまでに終わらせるか?
多くの人が、定年まで、と答えます。
定年は早いところで55歳、60歳から65歳まで、
それぞれ勤務先と職種により異なります。
また、雇用が継続・延長されても給与に関しては、
40歳代、50歳代前半と同じというわけにはいきません。
かなりの額の退職金が保証されている職種(公務員、大手企業)を除くと、
我が家の家計面での人生設計というのは、
結婚したら、冷静に正確に把握しておく必要があると思います。
サラリーマンなら、定年が決まっている。
いまの収入と同額、あるいは、上昇してもその上限というのは、ある程度、予想がつきます。
つまり、現役世代として稼ぎ続けることができる年数(期間)は、(定年)ー(今の年齢)となる。
現在30歳だと、65-30=35年
同様に、35歳だと、65-35=30年
3年後はどうなるか。
住宅ローンを借りて返済するとなると、残り32年、27年という具合に歳をとる毎に、
定年やそれ以降に、住宅ローン返済が家計の重荷になります。
要するに、老後の生活が苦しくなる。
(持ち家でなければ、家賃支払いが半永久的に続くので、さらに家計は苦しくなる)
一方、実際問題として、晩婚化などで第一子の出産が30代後半となり、
40代で子育てが始まり、住居問題、つまり家を建てる必要性がでてくる夫婦も増えています。
このような夫婦の場合、住宅ローン返済という観点でみると、
日を追うごとに、条件は厳しくなります。
(稼げる期間は短くなるが、住居に求める要求水準は高くなる)
もちろん、それまでの独身時代に、あるいは子どもを授かる以前に、
数千万円の貯蓄があれば、あるいは、両家から多額の贈与金があるのであれば話は別です。
子育て優先の家づくりでは、
子どもが子どもである時間を大切にする、という時間軸で物事を判断します。
一方で、家を建てるということは、
殆どの夫婦にとって、
・家賃を生涯支払い続けるか
・住宅ローンを長期間返済していくか
・古い家に辛抱して住み続けるか(これから半世紀、家屋の安全性は保証されるのか?)
これらの選択に、決着をつけることです。
そもそも論として、
結婚したときに、人生をその場しのぎで生きましょう、
と誓ったわけではないと思うわけです。
ただ、実際問題として、住居選択に関しては、
「ひとまず」というその場しのぎ的な選択をして、
「そのうち」が数年経過して、
夫婦が暮らし、子育てとその住環境について、どうするか、
という切実かつ重大な問題に関して、
夫婦で具体的に対話して、方針を決めて協力して行く、
という行為にエネルギーを避けなくなるケースはよくあります。
まさに「慣れの弊害」です。
3年前を振り返ってみる。
独身だった
子どもがいなかった
子どもはひとりだった(いまは3人)
親の介護は必要なかった
貯金があった
3年後はどうなっているのでしょう。
転職した
車をローンで買った(家はもう少し先で)
子どもの習い事で出費が増えた
親が病気がちになった
妊娠している
出産して、育児休暇中
転勤している
入学(入園)している
カビと結露と戦い続けている
老朽化がひどくなり、修繕費がかかる
家賃が上がった
給料が減った(増えた)
進学、進級のように、
制度的に決められたものは、準備ができる。
でも、自分の人生がどうなっているか、という問題は、
自分の意志でどうするか、というものと、
自分の意志や努力ではどうにもならない、予測不可能なものがあります。
できるものは、できるときに、やっておく。
抱えている住居問題は、解決する。
そういう物差しで選択することが
後悔しない人生になるのではないかと思います。

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私が書いています

代表取締役 小川勇人(おがわはやと)

代表取締役 小川勇人おがわはやと

1973年長崎の小さな工務店の長男として生まれる。2000年頃、シックハウス症候群と様々な社会問題が子育ての住環境に起因していることに気づく。以降、子育てを優先した家づくりに徹する。日経ビジネス誌にて「顧客の人生を助ける善い会社」として紹介(2015),著書「暮らしは変えられる」(2008)#妻と二男一女#ウルトラマラソン#登山#MBA(長大大学院,2014)#熊大工学部(1996)#長崎東#福大非常勤講師

暮らしは変えられる 「子育て優先」という選択 小川 勇人  (著) 小川 勇人のFacebook
子育ては、小川の家。