アフターメンテナンスが要らない家をつくる
私の基本的な設計思想(考え方)と実践について、結論からお伝えすると
「そもそもアフターメンテナンスが要らない家をつくる」です。
室内の仕上げ材に関しては、「自然素材を標準仕様」にしてから20年になります。決断の目的は二つあります。一つは、住む人の健康と安全のため。もう一つがアフターメンテナンスを不要にするためです。流行りのSDGsです。自然素材は、超長期間、使用できます。
構造・間取り・外観デザインに関しては、ハードもソフトも、50年後、100年後も使ってもらえるように考えて、つくっています。
これから20年の子育てのみならず、次の子育て世代、その次の子育て家族にも使ってほしいし、実際に使えることが私の家づくりにおける根本哲学、基本的価値観です。
「子育ての家」は、超長期に渡り、住む人が心豊かに健康に暮らせること、環境負荷を最小限にすること、アフターメンテナンスも最小にすることを目的として、トータルでデザインされています。
給湯器などの設備機器は、15年〜20年で交換です。これは器具(機械)の製品寿命であり、冷蔵庫の買い替えと同じです。積水ハウスさんでも当社でも同じです。アフターメンテナンスの問題ではありません。器具を交換するだけです(故障は部品交換。リンナイなどのメーカーの仕事)。
一般に、皆さんが「アフターメンテナンス」っておっしゃっているのは、ビニールクロスやフローリングなどの剥がれ、黄ばみや劣化での張り替えだと思います。実際に、アパートだと数年です。ですから、家を建てて、数年で、そういう修補が必要なのではないか、その時の対応と費用はどうなるのか、という懸念だと思います。
当社の場合、超長期間使ってもらえるように考えてつくっているので、そもそもその対象となるビニールクロスや合板フローリングなどの安価な新建材を使用していません。ですから、そもそも前提が異なります。
珪藻土、漆喰、無垢材を床・壁・天井に標準仕様です。数十年後もそのまま使える材料です。つまり、アフターメンテナンスの対象となる家をつくっていないのです。
外壁に関しては、15年前後で汚れが目立ち始めると、塗装をする場合が多いです。ただ、外壁の耐用年数は数十年ですから、外壁の汚れを持ち主が気にするか否か、気にしたとして、数十万円の費用をかけて、塗装をするかどうか、それをいつするか、は自由に決められます。コーキングの問題もありますが、それでも極端な話、雨漏り(屋根ではなく、サッシ周り)してきた時に、その部分だけ修補すればいいのです。構造的には支障がありません。
マンションのように組合で負担が決まって従うしかない、というものではありません。
<最後に、ウッドデッキに関して>
これはメンテナンスが必要です。木を雨晒し、火晒しですから、痛みますし、腐ります。メンテの方法は、塗装、腐った部分の交換。全体的に傷んだ場合には、すべて撤去して、①作り直す、②アルミのベランダに変える ③撤去して手すりをつける、です。
痛み具合は、使用頻度と塗装の頻度、建築地の気象条件(日当たり、湿度、周辺環境)によって、変わります。
なぜ腐るのにウッドデッキをつくるのか?日々を心豊かに、楽しく暮らすためです。
アルミのベランダで、ランチを食べたり、寝転がったり、BBQをしたり、しません。アスファルトの上に寝転がらないけれど、芝生の上には寝転がるのと同じです。
コンクリートの電柱に抱きつく人はいませんが、木には抱きつきます。
ホッとする温もりを味わうためです。
10年使えればいいと思っています。例えば、車。10年乗ったら、十分ではないでしょうか?買い換えるのではないでしょうか。軽自動車でも今は200万円ぐらいします。車検もオイル交換も洗車もタイヤ交換もありますし、税金も保険も必要です。
木は腐りますが、産業廃棄物にはなりません。地球がある限り、材木という材料はどこでも調達可能です。アルミのベランダの場合、そういうわけにはいきません。数十年後には、製造終了していますし、壊れても、多くの場合、部分交換はできません。アルミのベランダであっても、寿命があります。
毎日、ほっこりして暮らしてほしい。子どもたちが自然に囲まれ、木は腐る、水やりしなければ樹木は死ぬ、小鳥がやってくる、ぬくもりとはこういうことなのだ、そういうことをリアルに味わって欲しいのです。現代社会は無機質すぎるし、その傾向はより顕著になっている。
子どもと過ごせるかけがえのない日々を、ウッドデッキで、過ごした週末、何気ない日常、プール遊び、それが親子の家族の人生の想い出になっていくのです。
落ち着かない子供が増えていると言われますが、それはのびのび走り回れない、自然に触れる環境が、日常に、生まれたときからずっと無いからです。無いというより、奪われているか、与えられていないのです。砂場の土遊びもできない場所が増えましたし、公園も同様です。ウッドデッキをつくって、庭を森化する。小鳥がやってきます、セミも、中にはカブトムシも!以上、アフターメンテナンスについての私の基本的な考え方でした。
追記:
アフターメンテナンスを売りにする会社の場合、それはリフォーム受注(売上)に繋がるからです。数年ごとに、数十万円単位で、各OB宅からの売上が見込める。囲い込み、と言われます。
私はそもそもアフターメンテナンスが要らない方が消費者のためだと思っています(私が客ならそう考える)。数年で張り替えが必要な材料を使って販売して、再度、修繕売上を見込むという経営をするタイプではないのです。長く使える方が好きです。環境にもいいし、面倒くさくないですから。上記の通り、ウッドデッキだけは必要ですが、それはそれをやる価値があるからです。