初めての方へ

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~Sさま夫婦の奮闘記(妻バージョン)~


3月4日(木)10:00

時間ぴったりに小川さんが我が家にやってきました。

今日はプラン誕生の日です。


目の前に広げられた手書きのプラン図。

丁寧にやさしい色で描かれたそれは、まさに私たち家族の未来。じわりと感動が広がりました。


直接お会いしたこともお話したこともない設計者の夏井さん・・・あの家族のプロフィールだけでこのプランが産まれるとは・・・。すごい人だなあと思いました。すごい感性の持ち主だなあと。きっと、プロフィールに書いた文章の行間にある私たちの思いを感じ取ってくださったのでしょうね。


プランを見ながら、2月17日の夏井さんのブログを思い出していました。

寒い雨の中、現地調査に来て下さった。きっと冷たい雨でぬれた足元が冷えただろうと思います。熱い珈琲をポットに入れて駆けつけたい、もうちょっと近かったら会いに行けたのになあという思いで1日を過ごしていました。


ブログによると現地調査の後、夏井さんはこれから毎日続く夫の長い長い通勤時間を体感してくださり、仕事で多忙な夫もリラックスできて、家族みんなが気持ちよく過ごせる家を考えてくれました。そして生まれた目の前のプラン・・・「よかばい・・・」です。ほんとに。


2月上旬の土地決定の日が過ぎてからも、実は正直なところ、私の心のすみっこには夫の通勤時間がひっかかっていました。本当に大丈夫かな、日増しに疲労していく夫を見ることになるのでは、夫が通勤を苦に思うようになるのではという不安がどうしても消えなかったのですが、そのもやもやをこのプラン誕生が打ち消してくれました。


小川の家は、「子育て優先」とはいうものの、ちゃんと家族のために頑張るお父さん(夫)のことも考えてくれているのです。ホッとしました。任せてよかったと。決断を下すまでは試練にさらされているような苦行の途中のようななんともいえない厳しさがあるのですが・・・(笑)


小川さんが提案してくれた土地は、私たちにとってまったく馴染みのない場所でした。提案が届いてすぐ地図を開いて駅を確認して、第一印象は「ありえない・・・」でした。


へんな汗が出て小川の家はもう建てられないというショックが入り交じった状態で夫に電話をしたことを覚えています。


ところが、小川さんの話を聞く前にどうしても土地を見ておきたいと、仕事返上で夫が候補地を全て見て回り、一筋の希望の光が見えたのです。


翌日、候補地の説明に訪れた小川さんが「ここです」と言った場所と夫が「ここなら」と思った場所が一致しました。何かが動き出す、そんな予感がしました。


週末家族で現地を見に行きました。見知らぬ場所にもかかわらず、親から離れて駆け出していく娘と息子。公園を見つけて遊び、周辺を探検して、息を切らしながら戻ってきたその姿が答えをくれました


「ここ、いいね」と背中を押された気分でした。


この地に決めるかどうかにあたって、夫とはいろんな話しをしました。でもなかなか気持ちの整理がつかず、ほんの数日の出来事とは思えないくらい密度濃く多くのことを考えました。


そんな時、夫が私に言ったんです。


「あんなにいい場所、もうきっと他にはないよね。決めない理由がないと思うんだ。それに、今の暮らしを変えたら、俺たちもっと仲良くなれると思うんだよね。」って。この一言は大きかったです。


夫は自分なりに気持ちを整理して、もう自分の毎日の通勤時間うんぬんとは別の次元でこれからの生活を考え始めていると感じました。夫ながらこの人エライ!って思いました。


同時に、夫も今の生活に疲れている、何とかして変えたいと願っていることを実感しました。 「今のままじゃだめだ」と思いながら足踏みするのはもうやめなきゃいけない。子どもたちに続いて夫にも背中を押されながらの土地決定となったのです。(小川さんにも教えられました。「堂々めぐらない」こと。これ大事!



「暮らしを変える」


これはすごく勇気が必要ですし、すごいエネルギーが必要です。でも「子育て優先」の家作りは、「暮らしを変える」という発想がなければ実現できません。家族の暮らしを原点に立ち返って見直す、立て直す、土地の決定はそんな作業のように感じました


そしてそれまでの苦しみを打ち消すパワーを持つプラン誕生。この日は顔がニヤニヤしっぱなしでした。私たち家族の夢の実現のために時間と労力をフルに使ってレールを引いていってくれる人たちがいる、しかも安心して信じて任せられる・・・小川の家に出会えたこと、皆さんが力を貸してくださっている事に感謝の気持ちでいっぱいでした。



思えば10年前、夫婦二人で今のマンションに引っ越してきました。


今の住まいは一言で言うと、「便利」。買い物する場所もたくさんあって、病院も学校も近くにあって、何より駅にも近くて主人の通勤に本当に便利。どこへ行くにもアクセスがいい。マンション購入を決めるのに、この「便利」は当時の私たち二人にとっては必須項目でした


しかし、子どもが生まれてから私たちの価値観はじわじわと変化したのだと思います。こんなに便利でいいところに住んでいるはずなのに、なぜか暮らしが豊かにならない感、大事にしたいものが手に入らないような無力感、いらだち、考えて頑張っているのに報われないような徒労感、にうずもれていくような毎日でした。


どんどん活発になっていく我が家の娘と息子は、理想とする子育てとは程遠い、家の中では走るな、暴れるな、騒ぐな、という制約だらけの中で遊んでいました。


マンションを一歩出ると車の通りも多く、広い公園もありません。加えて不審者情報やら誘拐やらのニュースが相次ぐご時勢で、どこへ行くにも親がつきっきりでないと安心できません。息を抜く暇もなく、私自身いつも疲れていたように思います。


そのため、平日外で思いっきり遊ばせることはほとんどなく、外遊び=休日車で大きな公園へという日常でした。外で、しかも親の監視下にない自由な環境で走り回れることが、子どものあるべき姿だと思っていながら実現できないことに苛立ちを感じていました


同時に、同じような環境に暮らす多くの家族がその事をおかしい、子どものために何とかしようと思わないで(あるいは思わないようにして)(あるいはもうあきらめてしまって)(あるいはまったく何も疑問に感じないで)暮らしていることにも違和感を覚えるようになりました。



子どもを授かって一番変わったのは、「親としてどうするか」という視点が常にあるということだと思います。


日々目に見えて成長していくのがわかるわが子


体の成長を促す毎日の食事、

免疫をしっかりつける病気のかかり方、

自分の力で人生を切り開いていける力のつけ方、

果ては彼らの未来に緑豊かな地球を残すという環境への責任まで考えなければならないと強く感じるようになりました。


こうしたことを1つひとつ、たとえそれがどんなに小さなことであっても、実現させたり、将来に繋げていったりするのに大切なことは、「自分の目で見て、自分の耳で聞いたこと、自分の五感で感じたこと」を信じる力を培うこと、そして安易にぶれないことです。


世の中にはものすごい大量の情報と選択肢があふれていて、迷い振り回されている間にどんどん自分を見失ってしまいます。


そうなると自分に自信がもてなくなって、妥協したり我慢したり回りにあわせたりするばかりの生活になってしまうのです。


親としてこれではいけない、とふんばって自分をだますことを止めて、自分が大事にしたいことを最優先して一つ一つ丁寧に暮らし始めたら、とうとう大きな壁にぶつかった んですね。


自分が本当に大切にしたい暮らしってなんだろう、

子どもにとって一番大事なことってなんだろう、って。


自問自答の日々は続きました。


今まで守ってきた「便利」は、本当に家族の暮らしを豊かにしてくれているのだろうか、これからあと何年か子どもたちと過ごすわずかな時間を充実したものにしてくれるのだろうか、と

小川の家のHPに出会ったのもその頃だったと思います。


「子育ての家」その言葉に強烈にひかれました。場所は長崎。遠い!


マンションを買ってすでにローンがあるし、そもそも長崎の工務店だし、まあ、ありえないけど、こんなこと言っている人初めて知ったから、どんなことやってるのか知りたいな~という興味半分、もしかしたら何かヒントがあるかもという期待半分から資料を取り寄せました。


そのときは、今の暮らしを変えるということは現実味がありませんでした。人生を軌道修正なんて言われても、無理だよな~今の私たちには・・・が本音でした。


そして、夫はというと、「まあ、長崎だからできるんでしょ」と、ほとんど関心なく、取り寄せた資料は本棚の隅っこに追いやられました(すみません)。



それから2年、答えがでないままの自分に嫌気がさし、ふとまた小川の家のHPを見たら、小川さんは変わりない「価値観」のままやっぱり「子育ての家」を作っていました。


しかも、本が出版されている!なんと小川さんはゆるぎない価値観のもと、日々精進してバージョンアップしているではないですか。


2年かかって、また小川の家に行き着いてしまった・・・この人に会ってみたい、小川の家が見てみたい、と気持ちがどんどん高まっていきました。小川さんの本を夫婦で読破・・・それからは早かったです。


これまで関心を示さなかった夫の行動力も目を見張るものがありました


常々「もっとちゃんと考えてよ」「具体的にどうするかを考えてよ」と夫には厳しい意見をぶつけてきた私ですが、今回は夫がすっかりリーダーシップをとって進めてくれました。


仕事が忙しい中、本当によくやってくれたと思います。感謝だよ、ありがとう夫!


小川さんは家作りにおいて一番しんどい部分を一手に引き受けてくれるすごい人です。


4月上旬に工務店との契約が無事にすんだとき、「奮闘記かいてくださいね」とおっしゃいましたが、奮闘したのは誰でもない小川さんであり、設計の夏井さんであり、小川の家のスタッフの方たちであり、お金を貸してくれる銀行さんであり、これから家を建ててくれる工務店の方や職人さんたちであり、私たち家族はそんな多くの人たちの力で実現する家でこれからの人生の時間をすごせるという最高の幸せに向かって歩いています。

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私が書いています

代表取締役 小川勇人(おがわはやと)

代表取締役 小川勇人おがわはやと

1973年長崎の小さな工務店の長男として生まれる。2000年頃、シックハウス症候群と様々な社会問題が子育ての住環境に起因していることに気づく。以降、子育てを優先した家づくりに徹する。日経ビジネス誌にて「顧客の人生を助ける善い会社」として紹介(2015),著書「暮らしは変えられる」(2008)#妻と二男一女#ウルトラマラソン#登山#MBA(長大大学院,2014)#熊大工学部(1996)#長崎東#福大非常勤講師

暮らしは変えられる 「子育て優先」という選択 小川 勇人  (著) 小川 勇人のFacebook
子育ては、小川の家。