そもそも家ってなんだろう?

常に自らに問いかける言葉がある「家って、なんだろう?」
1子育て優先の家づくりをはじめたきっかけ

きっかけは、モデルハウスを見学にいらしたご主人から「家なんか、いらない」と言われたことです。私が父親の経営する工務店に入社してから3年目、20代後半(2000年頃)の出来事です。工務店の長男として生まれ育った私にとって、その一言は「お前なんか、いらない」という自らの存在価値の否定に聞こえました。加えて、当時は不況で経営的にも厳しい時期だったこともあります。これらがきっかけとなり、そもそも「家」ってなんだろう?わざわざ家を建てる必要があるとしたら、その目的はなんだろう?と自問自答する日々が始まりました。

私の結論は、「家とは子育ての場。子育てにとって大切な場」「家とは暮らしと人生の道具」。家づくりはその手段。つまり、家を建てる目的は、子ども・子育てのためであり、自らが望む暮らしと人生を叶えるためです。ですから、今の住居で、自らが望む子育てと暮らしができず、ストレスや不安を抱えている家族のために、子育てに良い家を建てよう、子育てを優先した家づくりをやろうと決めました。

2家族にとって幸福な人生ってなんだろう?

「子育てに良い家を建てよう」と決めたものの、どんな家が子育てに良いのか、当初はわかりませんでした。なぜなら、これまでの常識から「子供部屋さえあればよい」程度にしか考えていなかったからです。そこでまず私は「家族にとって幸福な人生ってなんだろう?」ということから考えました。なぜなら、私たちが扱っているのはマイホームだからです。家族がマイホームを購入する目的は「自分たち家族が幸せな人生を過ごすため」だと私は考えます。したがって、私たちがつくる家とは「家族が幸福な人生を過ごせる家」でなければならない。

そこで
「家族の幸福な人生にとって、いちばん大切なものってなんだろう?」
「どんな日常の暮らしだろう?」

これらについて考えました。

私が考える「家族にとっての幸福な人生」とは

  • ①家族の日常が、仲良く心豊かに健康に、安全、安心して、快適に暮らせる。
  • ②子宝に恵まれる(※子どもを望む夫婦の場合)
  • ③子どもがのびのび健康に育つ。
  • ④経済的に困窮しない。
  • ⑤近隣住民と良好な関係が築ける。
3日本の子育ての現状

次に、日本の子育ての現状について調べてみました。すると、厳しい現実が。
健康面では、アトピー性皮膚炎、小児ぜんそく、食物アレルギー
精神面では、キレる、引きこもり、育児ノイローゼ、児童虐待、密室育児による産後うつ、コミュニケーション能力の欠如、地域のつながりの希薄化、親と子、夫婦間の会話の欠如などが社会問題化している
ことがわかりました。
以下、データを紹介。

日本の子ども・子育てに関する社会課題
  • アトピー性皮膚炎患者数は国民の約10%(10人に1人)。
  • 喘息患者数は国民の約3%(30人に1人)。
    ※アトピー性皮膚炎や喘息の原因の一つは、室内のカビ、ダニ、ハウスダストです。
  • 化学物質過敏症の推定患者数は100万人を超える(NPO法人化学物質過敏症支援センター)。
  • 引きこもり世帯数は推計25万世帯を超える(厚労省の推計)。
    ※長期化、高齢化に伴い、より深刻な問題となっている。
  • 児童虐待件数は年間約100,000件(H27年度)。平成10年は約7,000件。加害者の約6割は実母、約3割が実父である(出典:厚労省「児童虐待対策の現状と今後の方向性」)。
  • ママの約半数が「育児ノイローゼだと感じたことがある」(出典:「育児ノイローゼに関する実態調査」2010年、MMD研究所」)。
  • ママの9割以上が「育児ノイローゼの解消には夫の協力が必要」(出典:同上)。
  • ママの7割以上が「子どもを叱りすぎて後悔したことがある」(出典:同上)。

私はこれらの原因の一つに住環境があると考えます。

4日本の標準的な子育ての住環境について

子育てに関する様々な問題が社会問題化するということは、それは特殊な家庭の問題ではなく、多くの母親や夫婦、子どもが悩み困っているという現実です。つまり、標準的な日本の住環境が原因の一つです。そこで標準的な日本の住環境を「子育てにとってどうか」という視点で見渡してみると、ゾッとしました。

以下、参考文献の一部

  • 「子供をゆがませる間取り」(横山彰人・情報センター出版局・2001)
  • 「家をつくって子を失う」(松田妙子・住宅産業研修財団・1998)
  • 「こうして直すシックハウス」(船瀬俊介・農文協・1999)
  • 「高層マンション子育ての危険」(織田正昭・メタモル出版・2006)

結論から言うと、戦後の日本の住宅建築においては「子供部屋を与えればよい」という程度で、短期的な「安さ」「部屋数」「広さ」「設備」「利便性」を重視し過ぎた結果、「子どもが心身健康に育つにはどのような住環境が必要なのか」という視点が欠落していたわけです。つまり「子どもがのびのび健康的に暮らせる」「母親が育児・子育てしやすい」という機能が備わっていない住宅をつくり続けてきたのです。少子化の要因の一つもここにあります。

加えて、過度のプライバシー重視により、家の中でも外でも密室化、個室化、その結果、子どもの自由な外遊びは禁止され(子どもが遊ばなくなったのではなく、遊べない環境をつくった)、大人が良くも悪くも他人の子に干渉しなくなりました。保育園・幼稚園への騒音苦情、集合住宅では、赤ちゃんの泣き声にすら管理会社からの「張り紙」「手紙」による苦情通知など、現代の日本はますます子育てしにくい環境になっています。こういう現実に気づいてしまった以上、なんとかしたい。「子育て優先の家づくりで日本の子育ての住環境を変えたい」、これが私の志であり、この事業をやり続けている動機です。

5子育てに良い家とは?

以上から、「子育てに良い家」とは

  • 家族が心身ともに健康に、安全、安心して、快適に暮らせて、
  • 経済的に困窮することなく
  • 子どもがのびのび育ち
  • 地域とのつながりが生まれ
  • 地球環境への負荷が最小限となる家です。

具体的な設計要件は

  • 家族の気配が伝わる
  • 季節を感じることができる、土や樹木、草花に触れられる
  • 子どもが家の中でも外でも自由に遊べる
  • 室内の空気がきれいで肌触りがよく、ジメジメしない
  • 地球環境や景観への配慮されている
  • 明るく、風通しがよく、使いやすい
  • 洗濯物が思う存分干せる、乾く
  • 建設コストがリーズナブルでメンテナンスコストが安価
  • 耐久性が高く、不具合が少ない
  • 流行に左右されない
6子育て世代が買えなければ意味がない

私は子育てに良い家は平均的な子育て世帯の収入で買えなければ意味がないと考えています。ですから、年収250万円の家庭でも実現するように、創意工夫し、商品化しています。そもそも現代の日本社会において、家族が心身健康に、安全、安心して、快適に暮らせる家がお金持ちしか買えないというのはおかしいと考えるからです。

補足
  • 子育て世帯の経済力:30代の平均年収:長崎県360万円、福岡県390万円。
  • これまで全国22都道府県150組以上のご家族に購入して頂きました。お客様からのクレームもトラブルも、住宅ローン破たんもこれまで一度もありません。
子育て世代が買えなければ意味がない